はじめに
以前社内でエージェントコーディングの活用術についてまとめたブログを、社外の方にも参考にしていただけるよう加筆修正しました。
Claude Code は定額制のため、コスト面での心配は不要ですが、実はコンテキスト効率化が重要になります。コンテキストウィンドウが大きくなりすぎると、AIの理解精度が下がったり、応答速度が遅くなったりする可能性があります。また、不要な情報が混在することで、本来のタスクに集中できなくなることもあります。
日々の開発作業の中で気づいたコツや効率化のテクニックをまとめていますので、Claude Code を使っている方、または使い始めようとしている方の参考になれば幸いです。
コンテキスト効率化術
Claude Code では、コンテキストウィンドウを効率的に使うためのコツがあります。以下のテクニックを理解して実践することで、より精度の高い回答を得ながら効果的な開発を行うことができます。
① 最初の計画が鍵
Claude Code でタスクを依頼する際は、最初の計画や指示が最も重要です。最初の計画が曖昧だったり方向性がぶれていたりすると、その後の作業がすべて無駄になってしまう可能性があります。
Claude Code では think 機能が有効です。Cline では Plan モードがありましたが、Claude Code ではプロンプトに「think」や「考えて」などの文字列を入れることで計画を立ててくれます。例えば:
- 「この機能を実装する前に、まず考えて計画を立てて」
- 「think: どのような手順で進めるべきか整理して」
- 「実装前に全体の設計を考えてから始めて」
このように明示的に思考プロセスを促すことで、しっかりとした計画を立て、効率的かつ無駄のない作業フローを実現できます。
詳細な使い方については、Anthropic の公式ドキュメントを参照してください。
② セッションを小分けにする
長いセッションで一つのタスクを継続すると、コンテキストウィンドウが肥大化し、AIの応答精度が低下する可能性があります。特に以下のような効率化効果があります:
- 一つのセッションが長くなるほど、過去のやり取りも含めて処理するためコンテキストが複雑になる
- タスクごとに新しいセッションを作成することで、必要最小限の情報だけで集中した作業が可能
- 関連するが独立した作業は別セッションに分けることで、コンテキストを整理し精度向上
Claude Code には /compact
コマンドでコンテキストを圧縮する機能がありますが、あまり多用せず、なるべくまっさらな状態からスタートできるとよいでしょう。なるべく小さいコンテキストでタスクができた方が、AIの理解も明確になり、より良い結果を得られます。
こまめにセッションを分けることで、AIの理解精度向上と作業効率の両方を達成できます。
セッションを分けるタイミング
セッションを分けるべき最適なタイミングは、「次の小タスクを実行する際に、それまでのタスクのコンテキストが不要だと判断したとき」です。例えば:
- 「文字の置き換えだけ」の単純な作業
- 「あるファイルと同じ処理を書けばいいだけ」の模倣タスク
このように、過去の会話コンテキストがなくても実行できる単純なタスクの場合は、新しいセッションを開始するとコンテキストをクリアにして精度向上を図ることができます。
なお、/clear
コマンドを使ってセッションを終えることができます。
③ GitHub MCP を活用する
基本的にAIに渡したい情報は社内のプライベートリポジトリに多く存在します。例えば、他プロジェクトの参考コードやIssueの内容など、開発で必要な情報の多くがGitHub上に蓄積されています。
GitHub MCP を使用することで、以下のメリットが得られます:
- プライベートリポジトリの情報に直接アクセス可能
- コードやIssueの内容を長々と説明する必要がなくなる
- リンクを渡すだけで AI が必要な情報を取得できる
- コンテキストに直接コードを貼り付けるよりも効率的
なるべくそういったまとまった情報はリンクを渡して見てもらうことで、コンテキストをスッキリ保ちながら必要な情報を AI に提供できます。
④ ファイル指定を積極的に使う
Claude Code では特定のファイルを指定して作業を依頼することができます。これを活用することで大きな効率化効果が得られます:
- ファイル指定を使わないと、AI がプロジェクト内のどこにファイルがあるかを探索するため余分なコンテキストを消費する
- 特に大規模なプロジェクトでは、ファイル探索のオーバーヘッドが大きくなりがち
- 対象ファイルを明確に指定することで、AI に直接ファイルの場所を指示できる
ファイル指定を積極的に使うことで、無駄なコンテキスト消費を防ぎ、より効率的にタスクを進められます。
⑤ 人間も積極的に介入する
AI にすべての作業を任せることが必ずしも効率的とは限りません。人間が適切なタイミングで介入することで、大きな効率化効果が得られます:
- 人間が少し修正するだけで解決できる問題はAIに長々と説明するより自分で直した方が速い
- 修正後は「〇〇は直しておいたから、続きの△△をお願い」と明確に次のタスクを指示する
- テキストで細かく説明するよりも、実際にコードを修正して見せる方が AI の理解も早まる
人間とAIの役割分担を適切に行うことで、コミュニケーションコストを削減しつつ、作業効率も向上します。特に単純な修正や調整は人間が行い、複雑な実装や検討は AI に任せるという棲み分けが効果的です。
⑦ 不要な MCP は切断する
Claude Code では、様々な外部ツールや機能を連携させるための MCP(Model Context Protocol)が利用できます。しかし、使用しないツールやサービスが接続されていると以下のデメリットがあります:
- コンテキストの消費:不要なツールの情報もコンテキスト処理の対象となり、効率低下につながる
- AI の混乱:使わないツールの存在が AI の判断を複雑にし、パフォーマンスに悪影響を与える可能性がある
これは「折り紙を折ってください。石鹸もあるので必要なら使ってください」と言われるような状況に似ており、不要な選択肢が混乱を招きます。そのため、実際に使用するツールだけを接続しておくことで:
- よりクリアな指示系統を確立できる
- 無駄なコンテキスト消費を抑えられる
- AI が本来のタスクに集中しやすくなる
プロジェクトで必要な MCP だけを選択的に接続することで、より効率的なパフォーマンスを実現できます。
まとめ
Claude Code は定額制でコストを気にせず使えますが、コンテキスト効率化により AI の理解精度と応答速度を向上させることができます。これらのテクニックを活用して、より快適で効率的な開発環境を構築してください。